造幣局 七宝章牌 雅楽の紹介(2008)

造幣局 七宝章牌 雅楽 七宝章牌
七宝章牌 雅楽

 これまで発売されてきた七宝章牌は、「能・狂言」、「人形浄瑠璃文楽」、「歌舞伎」、「藤娘」。いずれも我が国の伝統芸能を題材としてきました。

5作品目にあたる「雅楽」も日本を代表する伝統芸能であり、ユネスコの世界の無形遺産保護の一環である「人類の口承及び無形遺産の傑作」(無形文化遺産)に登録されているものになります。

また、今作は七宝焼きの彩色数が多く、デザインについても造幣局オリジナルのものとなっております。(前作「藤娘」も造幣局オリジナルデザイン)

伝統芸能を題材とした七宝章牌は、雅楽が最後となり、集大成とも言える芸術性の高い作品に仕上がっていると思います。

七宝賞牌 雅楽の仕様や図柄、彩色、デザインについてなど写真と共に記載いたしましたので、お時間あればご拝読お願い申し上げます。

七宝章牌 雅楽の仕様

章牌の図柄と仕様
章牌の図柄と仕様
材質:純銀
直径:60mm
重さ:約160g
仕上:七宝・金メッキ仕上げ

付属の栞による説明

『この七宝章牌は、重要無形文化財である雅楽を題材として、演目の一つである「青海波」をデザインし、製造いたしました。
「青海波」は、二人の舞人がゆったりと袖を振りながら、波の寄せ返す様子を舞う非常に優美な舞で、その装束は青海波の地紋に千鳥の刺繍が施された別様装束です。「青海波紋」は、この装束に用いられる文様であることからその名がつきました。
源氏物語の「紅葉賀」で、光源氏と頭の中将がこの「青海波」を舞う場面があることで有名です。』

七宝章牌 雅楽の図柄(外観)

雅楽の表面
雅楽(表)
【表】
 「青海波」の装束をまとった舞人が、袖を振りながら舞う姿を、オリーブ、ヒスイ、スミレ、黒茶、黄緑、透け緑、ベージュ、黄橙、赤橙の七宝で表現し、全9色という繊細かつ豊かな色彩で、芸術性の高い作品に仕上げています。
雅楽の裏面
雅楽(裏)
【裏】
 日本の伝統紋様である「青海波紋」を背景に、「雅楽」と「Gagaku」の文字をデザインしています。

章牌裏に配す紋様「青海波」について

“青海波”の言葉に馴染みがない方でも写真の模様は誰もがご存知だと思います。

青海波の模様
青海波

風呂敷や手ぬぐいに見られる波が積み重なる模様は、美しくもあり穏やかさも感じられます。

この「青海波」の模様は、七宝章牌の裏の背景に使われているものですが、表の「青海波」の装束にも用いられています。

青海波の模様
装束に用いられる青海波

遠目には柄のわかりづらい袖の部分ですが、近くで見ると「青海波」の模様がよくわかります。

章牌デザインの舞楽「青海波」について

雅楽の表面
宮中で舞われた舞曲

“青海波”というと『源氏物語』の読者であれば、光源氏と頭中将(とうのちゅうじょう)が宮中で舞った舞曲を思い浮かべるかもしれません。

青海波は、左方・唐楽・盤渉調で、「輪台」を“序”として四人舞、「青海波」を“破”として二人舞を続けて演じます。

・・・詳しく書いていくと七宝章牌からどんどん離れてしまうので、青海波の舞曲の出自について少し触れておくのみといたします。

雅楽や青海波の伝来や由来を知る為には、狛 近真著の「教訓抄」(天福元(1233年)成立)を参考にする方が多いでしょう。

『青海波龍宮楽也。昔天竺彼舞儀。青波浪上ニウカム。浪下ニ楽ノ音アリ。羅路波羅門聞レ之。伝云。漢帝都見レ之伝二舞曲云々。』

訳してみれば、

『青海波は龍宮の音楽である。これは昔天竺(インド)舞われていたものだ。青波が浪の上に浮かび、浪の下には音楽がある。羅国へ向かう途中、バラモン僧正がこれを聞き、漢帝の都にこの舞曲伝えた。』

といった内容のもの。(おおよそ間違いはないと思います)

大事なところは、水上にあって舞人が舞い、水中にて音楽が奏でられる、龍宮の楽舞というところでしょう。緩やかに袖を打ち返し、寄せては返す波を表現する優雅な舞いとなっております。

七宝章牌 雅楽の採色について

雅楽の表面
繊細な配色
オリーブ、ヒスイ、スミレ、黒茶、黄緑、透け緑、ベージュ、黄橙、赤橙 の9色。

これまで発売された七宝章牌では、概ね6色でありましたが本作品は全9色。オリーブ、ヒスイ、黄緑、透け緑と同系統の色が多く使われる中、繊細な配色が施されております。

ところで、どの部分にどの色が使われているかわかりますでしょうか?私は最初、スミレとベージュがわかりにくく、探してしまったものです。

スミレは、腰から垂れる平たい組緒の部分。ベージュは、おそらく顔の部分(白色にしか見えませんが)。

雅楽の表面
腰から垂れる平たい組緒

上の写真では胴の結びのあたりと腰から垂れる帯の刺繍に、スミレ色が使われているのがわかります。

刺繍の部分もよく見ると波と千鳥が描かれています。とても精緻な作りであるのがよくわかるものだと思いました。

※実際の装束に刺繍される千鳥は96羽あり、すべて異なる姿をしているそうです。

七宝章牌 雅楽のデザイン(解説)

雅楽の表面
造幣局オリジナルデザイン

七宝章牌 雅楽のデザインは、造幣局オリジナルのものになります。

青海波の装束の特徴である、青海波紋様に千鳥が刺繍されています。

※平安時代の文献では、柄が異なるものがあるようですが、近世・現代では青海波紋様に千鳥が袍(ほう)の柄に施されます。

舞人の姿形は、寄る波、引く波をゆったりと袖にてうち返す所作をデザインされています。

また、背景には舞台の地敷(じしき:絹製の緑布)と意匠的美観から設けられる高欄(こうらん:朱色の欄干)も見事な出来栄えで素晴らしい。

背面のデザイン

雅楽の裏面
青海波紋様

背面は、青海波紋と「雅楽 Gagaku」の文字。

雅楽の裏面
造幣局製刻印

造幣局製刻印は、背面下部に。

七宝章牌 雅楽の販売価格について

2008年(平成20年)に販売された価格は、133,000円(税込み、送料込み)。

昨年販売された藤娘は、135,000円でしたのでそれよりはやや控えめですが、これまでに販売された七宝章牌の中でも高めの設定になります。
しかし、章牌のデザインは造幣局オリジナル、七宝焼きの全9色はこれまでで一番多い彩色。これらを鑑みるにやや高めの販売価格ではありますが、決して高すぎるわけではないのかもしれません。

また、当時の販売予定数量は500個でした。
「お申し込み多数の場合には抽選となります。」の但し書きがありましたので、販売数は500個であったと思われます。

フリマサイト、オークション等での実売価格

日付 取引価格
2022/05 33,028円
2022/05 38,000円
2021/04 31,600円
2021/06 38,689円
2021/05 49,800円
2020/12 30,005円
2020/10 40,500円
2020/07 42,000円
2020/01 35,000円
2019/04 27,000円
2019/03 36,505円
2018/12 40,000円
2018/09 37,700円
2018/07 30,000円
2018/05 41,600円
2018/02 33,500円
2017/12 35,000円
2017/05 31,000円
2017/01 26,000円
2016/07 17,600円
2015/12 39,000円
2015/10 33,500円

直近で確認できたところはこの22件でした。
平均すると約35,000円くらいが実売価格と言えそうです。
市場に出回ることが少ない七宝章牌ですが、見かけたら手に入れたくなる逸品だと思います。

七宝章牌雅楽のケース
漆塗り特製ケース

今回はこの辺りで終わりにしたいと思います。ご拝読ありがとうございました。(管理人)

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