第百十五次製造貨幣大試験 七宝文鎮「飛天」の紹介

造幣局 貨幣大試験 飛天 貨幣大試験記念品
七宝文鎮「飛天」

 第百十五次製造貨幣大試験の際に記念品として製作されたのが、七宝文鎮「飛天」になります。

飛天の図柄は、日野法界寺の阿弥陀堂内陣壁画から採用されたものです。
法界寺の飛天は、東西南北の小壁に合計10体描かれますが、その中でも最も有名であろう飛天をモデルに製作されております。

七宝文鎮「飛天」の仕様や図柄、彩色、デザインについて写真と共に記載いたしましたので、お時間あればご拝読お願い申し上げます。

七宝文鎮「飛天」製品仕様

七宝文鎮飛天仕様
七宝文鎮 飛天
材質:丹銅
直径:約4.7cm×9cm 厚さ約0.5cm
重さ:約254g
仕上:七宝・金メッキ艶消し仕上げ

付属の栞には以下のような文言が書かれています。

『この文鎮の図柄は京都法界寺の阿弥陀堂内陣壁画(十二~十三世紀・国宝)から採用したものであります。
 この壁画は本尊の阿弥陀如来に向かって十体の飛天が描かれ、その姿は何れもおおらかで明るさに満ち、藤原時代沸画の形式感から開放された極めて自由な造形表現をもつ壁画の傑作といえます。
 製作に当たっては、地金に丹銅を使用し、図柄を線彫りして七宝を盛り周囲に金メッキを施し、艶消し仕上げにしたものです。』

法隆寺と法界寺の飛天

七宝文鎮飛天の外箱
外箱

飛天といえば真っ先に思い浮かぶのは、法隆寺金堂壁画(ほうりゅうじこんどうへきが)の飛天ではないでしょうか。
法隆寺金堂の壁面に描かれる仏教絵画の一部になりますが、7世紀末頃の作品と言われています。

法隆寺金堂の壁画に関しては、1949年(昭和24年)の不審火により多くの壁画が焼損してしまいますが、幸い小壁画の飛天像は火災を免れ、経年の劣化が見られる程度の美麗な姿で保管されております。
こちらの飛天像は、天衣([てんね]または[はごろも])、裳(も)・裙(くん)をはためかせ、華麗に飛翔する姿を見ることができます。

一方、日野法界寺阿弥陀堂の飛天も良く知られた壁画であり、こちらは、12~13世紀に描かれたものと言われます。
七宝文鎮「飛天」に採用された飛天は、両手に捧物を携え、ゆったりとゆらめき浮遊しているような様子が特徴的です。

こちらの飛天は、女性的な天女の姿をしておりますが、その他10体の飛天の中には、男性的な姿も見られます。
インドでは、男性の飛天を「ガンダルヴァ」、女性の天女を「アプサラス」と呼びますが、どこかでその名を聞いたことがある方もおられるかもしれません。

七宝文鎮「飛天」の図柄

七宝文鎮飛天の表面
七宝文鎮 飛天(表)

日野法界寺阿弥陀堂の飛天を線画で描き、七宝により独自の彩色を施されています。

天衣、裳・裙の着付けが細部まで描かれており、手先指先もはっきりと見てとれます。
浮き彫りのような立体感は控えめなものの、原図に忠実に飛天像を再現されているのではないかと思いました。

七宝文鎮飛天の表面
立体感は控えめ

少し不満があるとすれば飛天の表情。原図では頬に赤みを帯びて表情で何かを訴えかけるように感じますが、そこは省略されているようでして少し残念ではあります。

七宝文鎮飛天の表面
やや腐食有り

七宝部分に劣化は見られませんが、金属部分にやや腐食が見られます。

七宝文鎮飛天の表面
天衣

流れるような天衣。

七宝文鎮飛天の表面
足先

足先まで丁寧な作り。

七宝文鎮「飛天」の採色

七宝文鎮飛天の表面
七宝文鎮飛天(表)
臙脂、トルコ青、深緑、オリーブ、桃淡、白 の6色。

七宝は、臙脂、トルコ青、深緑、オリーブ、桃淡、白の六色になります。

原図の壁画からは、彩色に関して多くを伺い知ることはできませんが、当時の彩色に使われた鉱石や半貴石を砕いた岩絵の具を考えると、辰砂(赤)、孔雀石(緑)、藍銅鉱(青)、ラピスラズリ(紫)、そして天然顔料である本朱、胡粉、墨。
原色に近い色使いで、単純な色の塗り分け、色彩の魅力は乏しい感じありますが、当時の雰囲気が伝わる色使いではないかと感じました。

また、頭上の宝冠、胸の瓔珞(ようらく)、腕釧(わんせん)を金彩で上手く表現されているのではと思います。

七宝文鎮飛天の表面
全部で六色

背面

七宝文鎮飛天の背面
七宝文鎮飛天(背面)

背面および側面は、金メッキ艶消し仕上げをされています。
また、背面には「造幣局製」の文字が刻まれています。

七宝文鎮飛天の背面
造幣局製刻印

化粧箱

化粧箱
化粧箱

化粧箱は、外装がベロア生地、内装がベロアとサテン生地の一般的なものになります。

フリマサイト、オークション等での実売価格

日付 取引価格
2022/05 11,611円
2020/08 8,750円
2020/03 5,250円
2019/01 5,750円
2018/05 7,250円
2017/05 2,003円
2016/12 3,100円
2016/08 5,500円
2015/06 3,000円

直近で確認できたところはこの9件でした。

かなり古い品で製造数も限られていたと思います。
また、価格のバラつきは、収集家の少なさを物語るものかもしれません。
丹銅製のものになりますので、地金としての価値はさほど。希少性を考えての価格なのだと思います。

昨今は、徐々に高めの価格で取引されるようになってきているようです。なかなか出品もされないものでもありますので、ご縁があればというところでしょうか。

包装

以上、今回はこの辺りで終わりにしたいと思います。ご拝読ありがとうございました。(管理人)

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