造幣局 第百次製造貨幣大試験「七宝入文鎮 紅牙撥鏤尺」の紹介

造幣局 貨幣大試験 紅牙撥鏤尺 貨幣大試験記念品
紅牙撥鏤尺

 本文鎮は、正倉院宝物である「紅牙撥鏤尺」から図柄の一部を採用されたものになります。

第百次製造貨幣大試験の記念品として製作されたもので、1971年当時の品。
1971年(昭和46年)と言えば、造幣事業100年を向かえ、皇太子同妃殿下(現在の上皇上皇后両陛下)の御臨席のもと、記念式典が盛大に行われた年でもありました。

七宝入文鎮 紅牙撥鏤尺の仕様や図柄、彩色、デザインについて写真と共に記載いたしましたので、お時間あればご拝読お願い申し上げます。

「七宝入文鎮 紅牙撥鏤尺」製品仕様

七宝入文鎮紅牙撥鏤尺仕様
仕様
材質:丹銅
直径:約14cm×2.7cm
重さ:約218g
仕上:七宝・緑青・銀メッキ艶消し仕上げ

付属の栞には以下のように書かれています。

『この文鎮は、丹銅を材料として正倉院御物の「紅牙撥鏤尺」の華麗な模様の一部を図柄として用い、当局の伝統ある工芸技術によって製作したものであります。
◎「紅牙撥鏤尺」は、象牙を鮮紅色に染め文様を撥彫し、唐花文と鳥獣文が交互に配された物指の一種であります。』

紅牙撥鏤尺について

七宝入文鎮紅牙撥鏤尺の表面
七宝入文鎮紅牙撥鏤尺(表)

「紅牙(こうげ)」は、象牙(ぞうげ)に紅で染めていることを表し、
「撥鏤(ばちる)」とは、象牙を色染めして表面を彫刻し、象牙の白色の下地を見せることで図柄や文様を表現する工芸技法です。
「尺(しゃく)」は、一尺約30.3cmの長さを表すもので、物指であったと考えられている所からこの名前が付けられています。

紅牙の他にも緑牙もあり、尺の他にも棊子(きし※当時の碁石)があります。

象牙を用いた染色工芸の技法は、中国・唐代(8世紀)に盛んに行われ、日本でも伝来の品に倣い、奈良時代に作られていたと言われています。
その後、撥鏤の技法を用いた工芸品は見られなくなりますが、明治以降技法の復元が続けられており、撥鏤の人間国宝とされる工芸家の故・吉田文之氏、象牙彫刻家の村松親月氏、陶芸家の守田蔵氏などにより現代でも復元複製が行われております。

「七宝入文鎮 紅牙撥鏤尺」の図柄

七宝入文鎮紅牙撥鏤尺の表面
鹿・宝相華

大きさは、長さ約14cm。実物の半分程度のものになります。

七宝入文鎮紅牙撥鏤尺の表面
鳳凰・宝相華

図柄は、紅牙撥鏤尺の模様の一部を用い、上から鹿・宝相華・鳳凰・宝相華・鴛鴦(おしどり)の絵柄が区画を設けて配されます。

七宝入文鎮紅牙撥鏤尺の表面
鴛鴦(おしどり)

鹿や鳳凰、鴛鴦の絵柄は浮彫りの際、くっきりと描いたからか、素朴な趣を感じられます。
また、撥鏤の技法は彫ることで象牙の下地が表れ、白色の模様が浮かび上がりますが、本作品の場合は、浮彫り部分を模様として用いられています。

「七宝入文鎮 紅牙撥鏤尺」の採色

七宝入文鎮紅牙撥鏤尺の表面
七宝入文鎮 紅牙撥鏤尺

七宝は、臙脂(えんじ)を使用。背景の彫刻部分に臙脂の七宝を盛られております。

背面

七宝入文鎮紅牙撥鏤尺の背面
七宝入文鎮 紅牙撥鏤尺(背面)

背面および側面は、艶消し銀メッキ仕上げ。側面下に「造幣局製」の刻印があります。

原図の紅牙撥鏤尺は、蓮華と鴛鴦、含綬雙鳥(がんじゅそうちょう)、翼馬などが花弁や蝶と共に描かれますが、本作では背面までは作り込みされておりません。

七宝入文鎮紅牙撥鏤尺の側面
側面下に「造幣局製」刻印

化粧箱

化粧箱
化粧箱

化粧箱は、外装がベロア生地、内装がベロアとサテン生地の一般的なものになります。

外箱
外箱

外箱には造幣局記念品であることを示す熨斗。

フリマサイト、オークション等での実売価格

日付 取引価格
2021/07 14,500円
2021/02 6,770円
2020/09 6,055円
2018/08 3,600円
2018/05 1,100円
2018/03 3,300円
2017/03 5,000円
2016/03 1,000円

直近で確認できたところはこの8件でした。

かなり古い品で、製造数も限られていたと思います。
なかなかお目にすることがかないませんが、五千円前後で入手できればありがたいところだと思います。

包装
包装

以上、今回はこの辺りで終わりにしたいと思います。ご拝読ありがとうございました。(管理人)

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