造幣局 七宝章牌 能楽(能・狂言)の紹介(2003)

造幣局 七宝章牌 能楽(能・狂言) 七宝章牌
七宝章牌 能楽(能・狂言)

 七宝章牌 能楽(能・狂言)は、伝統芸能を題材にしたシリーズの第1作品目にあたります。また、近年製造されている祭りを題材にしたシリーズも含め、最初に製作された七宝章牌が能楽(能・狂言)でありました。

販売当時の平成15年は、財務省造幣局から独立行政法人造幣局に移行・設立された年でもあります。
財務省管轄時の「国の仕事」から独立行政法人に変わったことで一定の裁量を持った運営が可能となり、お客様向けのサービス向上が図られていきました。

こうした当時の状況も踏まえ、七宝章牌の制作に関してもお客様のニーズに沿った金属工芸品の多様化や高品質化の一環であったものと思います。

現行の七宝章牌の原点とも言える能楽(能・狂言)になりますが、勲章の製作で培ってきた七宝の技術が最大限に生かされた素晴らしい章牌と言えるでしょう。

七宝章牌 能楽(能・狂言)の仕様や図柄、彩色など写真と共に記載いたしましたので、お時間あればご拝読お願い申し上げます。

七宝章牌 能楽(能・狂言)の仕様

章牌の図柄と仕様
章牌の図柄と仕様
材質:純銀(品位証明マーク入り)
直径:60mm
重さ:約160g×2
仕上:七宝・金メッキ仕上げ

付属の栞による説明

製品仕様書
製品仕様書
『このメダルは、ユネスコで人類の口承及び無形遺産の傑作(世界無形遺産)として宣言されている日本の代表的な伝統芸能「能楽」の能及び狂言を題材とした七宝章牌です。
 造幣局の卓越した伝統工芸技術と、世界に誇る伝統芸能「能楽」の素晴らしさをマッチさせた章牌です。』

七宝章牌 能楽(能・狂言)の図柄(外観)

能の図柄

能の表面
能楽(能)表
【表】「能」
「野宮」に登場する六条御息所(ろくじょうみやすどころ)です。
能の裏面
能楽(能)裏
【裏】「菱文様と能」
 日本の伝統紋様である「菱文様」を背景に、能・Nohの文字を配しています。

狂言の図柄

狂言の表面
能楽(狂言)表
【表】「狂言」
「福の神」に登場する福の神です。
狂言の裏面
能楽(狂言)裏
【裏】「菱文様と狂言」
 日本の伝統紋様である「菱文様」を背景に、狂言・Kyogenの文字を配しています。

七宝章牌 能楽(能・狂言)の採色について

能楽の表面
能楽(能・狂言)
ヒスイ、橙、紺、赤橙、ベージュ、白、黒、薄紫 の8色。
※福の神の扇子の部分、袖紐の部分には「赤」(の別の色として)も使われているかもしれません。

どの部分にどの彩色が使われているかを見てみますと

六条御息所 薄紫、橙、赤橙、赤橙、白、黒、ベージュ
背景 ヒスイ、赤橙

狂言

福の神 紺、赤橙、白、ヒスイ、ベージュ
背景 ヒスイ、赤橙

七宝による繊細な色使いが立体的な盛り付けにより、伝統芸能の芸術性を伝えます。

七宝章牌 能楽(能・狂言)の図柄(解説)

能の図柄解説

能の表面
能楽(能)表

能『葵上(あおいのうえ)』に登場する六条御息所が描かれています。

広袖の女単(ひとえ)は、絽や紗の生地の文様を金彩で表し、薄紫のお色と共に優雅な装束となっております。

六条御息所のシテ方の能楽師は、おそらく重要無形文化財保持者(人間国宝)で宝生流シテ方である松本恵雄氏によるものと思われます。
(明言はされておりませんが、平成13年に発売された「世界無形遺産貨幣セット 能楽」の説明にも登場しております)

能の面
能楽(能)面

能面の顔立ちも作り込まれている。

浮彫り
浮彫り

浮彫りの様子もお見事。

能の裏面
能楽(能)裏面

裏面は、菱文様に「能(Noh)」の浮彫り。

狂言の図柄解説

狂言の表面
能楽(狂言)表
狂言
狂言『福の神』に登場する福の神が描かれています。

翁の法被(はっぴ)が特に見事で、金銀箔の柄を金彩で精緻に表現されており、面・烏帽子・扇子の小物類もこの上なくめでたい様子が伺えます。

狂言の法被
能楽(狂言)法被

細部まで作り込まれた翁の法被。

狂言の面
能楽(狂言)面

面の表情も見てとれる。

狂言の浮彫り
浮彫りと七宝

七宝の盛りに職人の手仕事が伺える。

狂言の裏面
能楽(狂言)裏面

裏面は、菱文様に「狂言(Kyogen)」の浮彫り。

七宝章牌 能楽(能・狂言)の販売価格について

漆塗り木製ケース
漆黒の漆塗り木製ケース入

2003年(平成15年)に販売された価格は、230,000円(税込み、送料込み)。

純銀製の工芸品としては高額なものだと思いますが、一般的な金属メダルが金型を元に金属板へ模様を転写するのに加え、七宝の盛り付け、七宝の焼き付けの工程が加わります。

また、メダルの表面は金メッキで仕上げられます。

七宝の盛り付けや焼き付けは七宝工の職人による手作業となるため、造幣局が製作する金属工芸品の中でも一線を画す七宝章牌と言えるのではないでしょうか。
煌びやかな彩色と優美な図柄に目を奪われる方も多く、芸術的な意匠が込められた逸品であり、この価格も決して高いものではないと思っております。

私の主観が過ぎてしまったので、ここで少し他の金属工芸品と価格の比較を行い、販売価格の実情を見てみます。

2003年(平成15年)に販売された金属工芸品との比較

製品 材質 重さ 販売価格
肖像メダル 徳川家康 純銀 160g 15,000円
七宝章牌 能楽(能・狂言) 純銀 320g
(160g×2)
230,000円
平成大判 純金 155g 500,000円

上記に加えて当時の金・銀相場を見てみると

銀相場は、1グラムあたり 20円前後
金相場は、1グラムあたり 1,400円前後

という状況でした。

徳川家康の肖像メダルが、15,000円の販売価格だったことを考えると能楽の七宝章牌が2枚セットとはいえ、230,000円の販売価格はかなり高額だったと思います。

また、当時は純金の相場も今程に高騰はしていませんでしたが、それでも20円と1,400円の開きがあり、70倍。
地金の価値として考えるものではないにしろ、いかに高額に設定されていたのかがわかると思います。

では、もし今、手に入れようとするならいくらくらいで購入が可能なのかは、フリマサイトやオークション等の実売価格で調べてみました。

フリマサイト、オークション等での実売価格

日付 取引価格
2021/07 65,555円
2020/10 80,000円
2020/07 82,010円
2020/01 81,000円
2019/09 67,000円
2018/12 75,000円
2017/10 55,000円
2017/06 59,000円
2016/04 52,000円
2015/07 38,600円

直近で確認できたところはこの10件でした。
販売数も限られており、コレクターが所有しているものと思われ、手放すことも少ないでしょうからなかなかお目にかかれません。(500セットより少ないものと思われます)

当時の販売価格よりはかなり安く手に入るとは思いますので、出品されていたら検討するのもいいかと思います。

今回はこの辺りで終わりにしたいと思います。ご拝読ありがとうございました。(管理人)

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