第百六次製造貨幣大試験の際に記念品として製作されたのが、「七宝入雷神図文鎮」になります。
江戸時代初期の大絵師・俵屋宗達筆の風神雷神図屏風より雷神を模したもので、力強く雷太鼓を打ち鳴らす姿は、動きのある手足により躍動感を伝えます。
なお、第百六次の貨幣大試験の開催は、1977年。40年以上経た古い品になります。
七宝入雷神図文鎮の仕様や図柄、彩色、デザインについて写真と共に記載いたしましたので、お時間あればご拝読お願い申し上げます。
「七宝入雷神図文鎮」製品仕様
付属の栞には以下のような文言が書かれています。
「七宝入雷神図文鎮」の図柄
前述の通り、俵屋宗達筆の雷神図が採用されています。
俵屋宗達による「風神雷神図屏風」は、後年、先人の作品を学ぶ絵師により熱心な模写をされたことで知られています。中でも琳派で知られる尾形光琳や江戸末期に琳派を再興した酒井抱一による模作が有名です。
近年では、美術館の展示でこれらの作品を一度に見られることもありますね。(稀にですが)また、比較研究も行われていたりしますので、興味のある方は見比べてみるのもいいかもしれません。(わかりやすい違いでは、雷神の視線。俵屋宗達オリジナルでは、下向きの視線が、模作のものは横向きの視線であったりします)
さて、造幣局製の七宝入雷神図文鎮では、黒雲は省かれた構図となっております。このせいか奥行き感はぼやけた印象を受けます。この辺りは金属工芸品であるがゆえの難しさとも感じます。また、白肌の雷神は、絶妙な肉感のあるものですが、金彩を上手く使って表現されておりました。
右手は、握った指と手の平が見える面となりますがやや難しく、細部は試行錯誤が見られる部分かもしれません。
この他、図柄の背景の金メッキ艶消し仕上げは、金箔の屏風を上手く模した形となり、作品の雰囲気をうまく伝えてくれるものでもありました。
「七宝入雷神図文鎮」の採色
六色の七宝が使われており、風神雷神図屏風と比べるとやや濃い目の色使いに感じます。
七宝による彩色は、浮き彫りにした図柄の上に施されるものですが、雷神の形は縁取るように模られているため、自然な風合いというよりは、金属工芸品らしい模りと色使いに感じられるものでした。
この角度で見てみると浮彫りの様子がよくわかると思います。
背面
背面および側面は、金メッキされています。また、側面下部には「造幣局製」の文字が刻まれています。
本作は、かなり古い品になるため市場に出回る品の中には、部分的に七宝が剥がれてしまっているものもあります。仕方ないことではありますが、入手を考えておられる場合は、細部までよくご確認の上、購入を検討なさるのが良いと思います。
(雷神図の場合は、線状の頭髪部分や広く塗られた腹部の辺りが剥がれやすいようです。七宝の釉薬はガラス質のものになりますので、経年劣化がどうしてもありますね)
造幣局製刻印は側面。
化粧箱
化粧箱は、外装がベロア生地、内装がベロアとサテン生地の一般的なものになります。
フリマサイト、オークション等での実売価格
日付 | 取引価格 |
---|---|
2022/05 | 9,513円 |
2021/10 | 8,800円 |
2018/04 | 5,250円 |
2016/03 | 3,160円 |
直近で確認できたところはこの4件でした。この他、私が見たことがある価格では、18,000円で販売されているものもありました。(売れずに残っていた)
かなり古い品で、製造数も限られていたと思います。また、価格のバラつきは、収集家の少なさを物語るものかもしれません。丹銅製のものになりますので、地金としての価値はさほど。希少性を考えての価格なのだと思います。
以上、今回はこの辺りで終わりにしたいと思います。ご拝読ありがとうございました。(管理人)