第百三次製造貨幣大試験の際に記念品として製作されたのが、「螺鈿紫檀五絃琵琶紋文鎮」になります。
名称の通り、正倉院所蔵の螺鈿紫檀五絃琵琶のデザインを模したもので、実物と同様に繊細に描かれた宝相華文が美しく、透明の七宝で光沢感を表現しております。
なお、第百三次の貨幣大試験の開催は、1974年。40年以上経た古い品になります。
螺鈿紫檀五絃琵琶紋文鎮の仕様や図柄、彩色、デザインについて写真と共に記載いたしましたので、お時間あればご拝読お願い申し上げます。
「螺鈿紫檀五絃琵琶紋文鎮」製品仕様
以下、付属の栞には以下のような文言が書かれています。
「螺鈿紫檀五絃琵琶紋文鎮」の図柄
前述の通り、螺鈿紫檀五絃琵琶背面の宝相華文が採用されています。
宝相華文様は、唐草文様の一種と言われ、薔薇のような花弁の花と蔦が這うように描かれている文様になります。螺鈿紫檀五絃琵琶では、花と蔦が上方に向かい流麗な模様を一面に配しますが、造幣局製の本作も同様に優美な文様をあらわしています。
螺鈿紫檀五絃琵琶は、奈良時代(聖武天皇の時代)製作のものと伝えられますが、当時の物で残されているのは、この五絃琵琶のみとされています。
背景の黒色に映える花と蔦。
半球形の作り。
「螺鈿紫檀五絃琵琶紋文鎮」の採色
宝相華文様は紫檀地一面の上に、薄く切り透かした夜光貝を貼り合わせられたものですが、見る角度によって煌めくその透明感と光沢は、素晴らしいものだと思います。
本作では実物と同様に、紫檀地に黒の七宝、花弁に白の七宝、花芯に赤の透け七宝が使われています。
写真は、丹銅のものになりますが、純銀製のものもあるそうです。純銀製の方が実物により近く、白を基調にやや青みがかった彩色が見られるようです。
背面
背面は、銀メッキ。また、背面下部には「造幣局製」の文字が刻まれています。
化粧箱
化粧箱は、乳白色のプラケース、内装がベロアとサテン生地の一般的なものになります。
外箱には造幣局記念品であることを示す熨斗。
フリマサイト、オークション等での実売価格
日付 | 取引価格 |
---|---|
2021/06 | 6,750円 |
2020/09 | 3,600円 |
2018/01 | 10,000円 |
2017/07 | 4,300円 |
2016/01 | 1,700円 |
直近で確認できたところはこの5件でした。
かなり古い品で、製造数も限られていたと思います。また、価格のバラつきは、コレクターが限られていることを表しているのかもしれません。丹銅製のものになりますので、地金としての価値はさほど。希少性を考えての価格なのだと思います。
あとがき
私が知る限り本作は、七宝焼きのメダル・章牌・文鎮といった形状の初期の作品だと思います。造幣局では、七宝の工芸品を古くから扱っているとは思いますが、主に勲章に用いておりました。個別に依頼のあった、メダル・章牌・文鎮の製品は存在したかもしれませんが、一般的な記念品としての製作は本作が初期の作品であったのではないかと思われます。
以上、今回はこの辺りで終わりにしたいと思います。ご拝読ありがとうございました。(管理人)