七宝入り銀章牌「崑崙八仙」は、原図「舞楽図屏風」(俵屋宗達作・醍醐寺所蔵)より舞楽の一つ「崑崙八仙」の絵柄を採用されたものになります。※
※宗達が描いたものも元になった舞楽図(古図)から抜き出したものと言われていますので、厳密には舞楽図(古図)の一部。
原図を忠実に、金属工芸品らしい重厚感や浮彫りによるデザインが秀逸で、見栄えのする七宝章牌の一つであると思います。
七宝入り銀章牌 崑崙八仙の仕様や図柄、彩色、デザインについてなど写真と共に記載いたしましたので、お時間あればご拝読お願い申し上げます。
「崑崙八仙」七宝入り銀章牌の仕様
原図「舞楽図屏風」(俵屋宗達作・醍醐寺所蔵)について、醍醐寺文化財アーカイブスより以下引用。https://www.daigoji.or.jp/archives/cultural_assets/NP023/NP023.html
重要文化財
金地著色舞楽図〈宗達筆/二曲屏風〉
一双
指定番号:00680 /重文指定年月日:1919.04.12 (大正8.04.12)
解説文:江戸時代の作品
作者:宗達
崑崙八仙(こんろんはっせん)とは
封神演義をご存知の方は、見聞きされたことがあると思います。
崑崙とは、崑崙山とも呼ばれ、中国のはるか西方、仙人や道士が住まう地。仙界とされます。
八仙は、中国の神話に基づく仙人の中でも代表的な八人の仙人のことを表します。八人の仙人は諸説ありますが、李鉄拐・漢鍾離・呂洞賓・藍采和・韓湘子・何仙姑・張果老・曹国舅 とされ、八仙を題材とした小説『八仙東遊記』(呉元泰)が有名です。
また、杜甫の「飲中八仙歌」に登場する八仙は、酒仙とも呼ばれ、酒豪の逸話で知られています。酒仙の中では特に李白が有名で、詩人として杜甫と李白は教科書でも見られますのでご存知の方も多いと思います。(杜甫:詩聖、李白:詩仙、王維:詩仏 と呼ばれる)
崑崙八仙は、雅楽の曲名としても知られ、鶴舞、ころばせ、くろはせとも呼ばれたりもします。((こ)ん(ろ)ん(は)っ(せ)ん)(久呂波世)
曲は『帝の徳を讃えて曲を作り、舞った』と言われる故事によるものですが、漢の淮南王劉安(紀元前179年 – 紀元前122年)の時代に来朝した仙人達の言い伝えを元に作られたとも言われています。
以前、読ませていただいた「宮内庁楽部 雅楽の正統」(著者:皇室編集部)にて紹介があったと記憶しておりますが、雅楽に関する内容は以上になります。
崑崙八仙の図柄
原図は、俵屋宗達作「舞楽図屏風」の左隻左扇『崑崙八仙』より。舞楽図屏風では他にも、右隻から『採桑老』、『納曽利』、『還城楽』、『陵王』、そして左隻に『崑崙八仙』とあり、全く別の演目の舞人が二曲一双の屏風に描かれています。
崑崙八仙は、鶴が舞う姿を四人舞で表現したもので、鶴の仮面と装束に鯉の模様が描いてあるのが特徴的です。
俵屋宗達作「舞楽図屏風」から忠実に四人舞を模られたもので、面や装束の模様など見事な作りだと思います。
独特な鶴の仮面。
四人舞の動きのある様子。
細部も丁寧な七宝盛りが見られる。
崑崙八仙の採色
七宝は、紺透、深緑濃透、桃、白の四色になります。
透け七宝を用い、透明感を出すと共に装束の柄を透かして表現されています。また、浮彫り部分の艶消し銀彩が色彩のアクセントになっており、限られた彩色の中、鮮やかさが伝わる仕上りになっているのが見事です。
原図の舞楽図屏風では、紺、深緑の色合いは原色のようなものですが、透け七宝を用いることで金属工芸品としての良さを見られる作品と思いました。
崑崙八仙の背面
背面および側面は、金メッキ仕上げ。また、背面には「純銀」と「造幣局製」の文字が刻まれています。
フリマサイト、オークション等での実売価格
日付 | 取引価格 |
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2023/08 | 34,000円 |
2022/05 | 41,800円 |
直近で確認できたところはこの2件でした。
ほとんど見かけることがなく、以前訪れた造幣局のさいたま博物館にも展示がありませんでした。造幣局泉友会発行の図録「造幣局の金属工芸品」に掲載されておりますので、過去に記念品などで製造されたものと思われますが、限定した生産数だったものと推察しております。
以上、今回はこの辺りで終わりにしたいと思います。ご拝読ありがとうございました。(管理人)