第百十八次製造貨幣大試験の際に記念品として製作されたのが、七宝入「創業当時の造幣局風景」文鎮になります。
図柄は、創業当時に描かれた錦絵を元に造幣局の風景が色彩鮮やかに七宝で再現されております。
七宝入「創業当時の造幣局風景」文鎮の仕様や図柄、彩色、デザインについて写真と共に記載いたしましたので、お時間あればご拝読お願い申し上げます。
七宝入「創業当時の造幣局風景」文鎮 製品仕様
付属の栞には以下のような文言が書かれています。
小信は、このほかにも文明開化の大阪の風物を題材にした木版画を数多く残しております。
文鎮の製作に当たっては、丹銅地金に図柄を線彫りして七宝を盛り、周囲に銀メッキ仕上げにしてあります。』
浪花川崎鋳造場風景
前述の通り、原図は、明治初期の浮世絵師「長谷川小信」(このぶ)による『浪花川崎鋳造場之図』の一部を採用したものになります。
原図である錦絵の『浪花川崎鋳造場之図』は、以下の関西大学アジア・オープン・リサーチセンターより閲覧が可能です。https://www.iiif.ku-orcas.kansai-u.ac.jp/books/210072393
造幣寮(現造幣局)の開業は、明治4年2月(1871年)。長谷川小信による版画の出版時期も明治初期と言われておりますので、開業間もない頃の当時の風景がこちらの図柄になります。開花する沿道の桜や深い色を付ける松の木の様子が春らしく、鋳造場から立ち昇る煙や淀川に行き交う川舟が活気の良さを伝えてくれます。
絵画に明るくない私でも大和絵や錦絵などと呼ばれる日本らしい作風は、色彩鮮やかに当時の風合いも感じられるいい物だと感じます。浮世絵や錦絵はこうした風景画の他にも、歌舞伎絵、美人画、花鳥画、春画など多岐に渡ると思いますが、美術品として当時の風俗や景観を知る資料として貴重な物でもありますね。
長谷川小信はこの他にも、神戸名所、浪花名所、浪花十二景など開化期の風景画、風俗画、玩具絵、武者絵、戦争絵、美人画、新聞の挿絵や銅版画を手がけているそうです。
七宝入「創業当時の造幣局風景」文鎮の図柄
構図に関しては、造幣局の鋳造場を中央に原図の一部を切り取ったものです。淀川に浮かぶ外輪蒸気船と川舟に、沿道の桜並木と松の木、鋳造場の建物についてもですが構図の再現は忠実と思います。
また、細部では川舟で作業する人の様子や沿道の人、沿岸の石畳も描かれます。鋳造場や外輪蒸気船の細かい部分こそデフォルメされておりますが、錦絵の雰囲気を上手く伝える線画だと感じました。
細かい部分もよく作り込まれています。
川舟や作業する人の様子も忠実に再現。
建物の様子。
蒸気船の煙はしっかりと、建物の煙は控えめに。
図柄手前には、外輪蒸気船の姿が見られます。
七宝入「創業当時の造幣局風景」文鎮の採色
十色の七宝が使われており、淡い色使いが特徴的です。
細かい部分では、緑の松の木が陰影をつけるかのように、濃い緑と少し淡い緑の二色で彩色。外輪蒸気船から立ち昇る煙は、白と黒を上手く組み合わせて表現されております。
錦絵らしい多色摺りの鮮やかさを感じる彩色でありました。
背面
背面および側面は、銀メッキ仕上げ。また、背面には「造幣局製」の文字が刻まれています。
造幣局製刻印は背面下部。
化粧箱
化粧箱は、外装がベロア生地、内装がベロアとサテン生地の一般的なものになります。
フリマサイト、オークション等での実売価格
日付 | 取引価格 |
---|---|
2022/06 | 8,250円 |
2022/05 | 9,950円 |
2021/09 | 7,245円 |
2021/05 | 9,250円 |
2020/08 | 8,345円 |
2018/12 | 10,500円 |
2018/12 | 10,500円 |
2016/08 | 6,250円 |
2015/09 | 4,100円 |
直近で確認できたところはこの9件でした。
かなり古い品で、製造数も限られていたと思います。なかなかお目にすることがかないませんが、一万円以内で入手できればありがたいところだと思います。
以上、今回はこの辺りで終わりにしたいと思います。ご拝読ありがとうございました。(管理人)