第百七次製造貨幣大試験の際に記念品として製作されたのが、「七宝入松島図文鎮」になります。
江戸時代初期の大絵師・俵屋宗達筆の松島図屏風より右隻の一部を模したもので、荒々しい白波と岩に切り立つ自然の彩色が鮮やかに再現されています。
なお、第百七次の貨幣大試験の開催は、1978年。40年以上経た古い品になります。
七宝入松島図文鎮の仕様や図柄、彩色、デザインについて写真と共に記載いたしましたので、お時間あればご拝読お願い申し上げます。
「七宝入松島図文鎮」製品仕様
以下、付属の栞には以下のような文言が書かれています。
原図である「松島図屏風」について
風神雷神図屏風と並び俵屋宗達の最高傑作と謳われるのが「松島図屏風」になります。荒波に切り立つ岩、群生する松や浮き雲が色鮮やかに描かれた作品。六曲一双の金地屏風に描かれる大作であり、日本に現存すれば間違いなく国宝指定されていると言われる逸品です。
※明治期、チャールズ・ラング・フリーアに購入され、現在はワシントンDCにあるスミソニアン博物館のフリーア美術館に所蔵されております。
図版を見るに、左隻(の特に州浜)に違和感を感じたものですが、これは写真や画像で見るとどうしても平面で見る形になってしまうからそうです。右隻の右の岩間から左隻上方の松へ遠近がつけられており、自然と魅入ってしまう構図のようです。
また、荒波は髪の毛を描くように一本一本丁寧なうねりが書かれています。これが本当に細かく均一に描かれているわけですが、俵屋宗達の常人離れした業が伺い知れます。
構図や配色の美的感覚のみならず、卓越した技術を要していたのは宗達の個性豊かな表現と一括りには語れない魅力を物語るものと思いました。
なお、松島図屏風は門外不出(館外の持ち出しを禁止)のため日本で見ることができない作品ですが、高精彩複製品が祥雲寺に寄贈されております。
「七宝入松島図文鎮」の図柄
前述の通り、松島図屏風より右隻、右部分より荒波の中に切り立つ岩と群生する松を採用したものです。
下地の鍍金には、うねるような波の紋様を施し、白波が波打つ様子を伝えます。また、波間に切り立つ岩(山)には、青や緑で自然が描かれ、松の様子と共に作図されました。
個人的にはですが、図柄の一部ではなく俯瞰図のような構図も見たくなるものですが、土台の空間上の制約や細部の表現の難しさを考えるとこのような形式が見栄えするのかもしれません。
この他、背面の金メッキ艶消し仕上げは、金箔の屏風を上手く模した形となり、作品の雰囲気をうまく伝えてくれるものでもありました。
彫りの深い下地に七宝をあしらう。
七宝の盛りは場所によって異なる様子が窺える。
うねるような波模様と七宝による白波。
細部の作りもお見事。
「七宝入松島図文鎮」の採色
七色の七宝が使われており、原図の松島図屏風より明るめの印象です。
※松島図屏風は、400年以上経ていることもあり変色しています。本来はもっと明るい色調であり、躍動感や色彩の豊かさが際立つ作品であったとも言われているそうです。
原図である金地の屏風と同様に、下地の鍍金を上手く生かした彩色であり、浮き彫りに仕上げることで凹凸による明暗が上手く表現されたものでありました。
七宝の彩色のみならず、鍍金による金地を最大限に生かした素晴らしい作品ではないでしょうか。
艶消し仕上げも作品の風合いに一役買っている。
限られた色の中に色彩の豊かさが感じられます。
背面
背面および側面は、金メッキされています。また、側面下部には「造幣局製」の文字が刻まれています。
化粧箱
化粧箱は、外装がベロア生地、内装がベロアとサテン生地の一般的なものになります。
フリマサイト、オークション等での実売価格
日付 | 取引価格 |
---|---|
2022/12 | 7,350円 |
2022/05 | 8,250円 |
2022/03 | 5,500円 |
2021/05 | 9,000円 |
2016/09 | 5,500円 |
2016/08 | 8,000円 |
2015/12 | 10,500円 |
2015/11 | 8,200円 |
直近で確認できたところはこの8件でした。この他、私が見たことがある価格では、20,000円で販売されているものもありました。(売れずに残っていましたが)
かなり古い品で、製造数も限られていたと思います。また、価格のバラつきは、収集家の少なさを物語るものかもしれません。丹銅製のものになりますので、地金としての価値はさほど。希少性を考えての価格なのだと思います。
私見では、6,000円~8,000円の価格が妥当ではないかと考えております。(状態の良いもので、10,000円前後くらい?)
以上、今回はこの辺りで終わりにしたいと思います。ご拝読ありがとうございました。(管理人)