金価格上昇の理由と今後の覚え書き

金の延べ板 ブログ
金の延べ板

※2023年7月13日投稿

 6月17日、田中貴金属工業が金の店頭販売価格を1グラム当たり9,876円に設定したとのニュースは記憶に新しく、過去最高値を更新しておりました。その後も高値圏を推移しており、7月5日は再度高値更新の動きを見せて9,886円。7月13日時点でも9,619円と高値で張り付いているような状況です。

ここ数年上昇を続ける金価格ですが、大きな外部要因としては新型コロナウイルスの流行(2020年2月~)、ロシアのウクライナ侵攻(2022年2月~)がありました。新型コロナウイルス流行の正確な時期は諸説ありますが2020年以降というのは間違いないと思います。
この二つの外部要因は、現在も継続しているような状況下ですので、終息に伴う需給の改善というのはまだ不十分だと思われます。

この他、各国の中央銀行が金を買い増ししているニュースもここ一年はずーっとですね。特に中国の金購入は2022年9月から再開しており、同時に米国債の売却も進めているため様々な思惑も重なっています。

また、直近ではこのようなニュースもありました。
『BRICSは金を裏付けとする通貨の導入を検討』(MINKABU 2023/07/04)
BRICSの共通通貨の話題は少し前から出ておりましたが、「金を裏付けとする」という部分が興味深いですね。信用を担保するために金をベースにするというところでしょうか。国際的にどこまで利用されることになるか(本当に導入されるか)は不透明ですが、万が一原油の取引でも利用可能となればドルの信認に大きな影響を及ぼすのは間違いありません。(サウジアラビアがBRICSが運営する銀行(NDB)に参加することを協議しているニュースもあります)

もう一つ気になる点としては、各国の金融政策。昨今のインフレ退治の対応です。
一般的に金融引き締めは金価格の下落要因、金融緩和は上昇要因と言われていると思いますが、理屈的には金融引き締めで金利が上がればドルの価値が上がるので、ドル建ての金価格が下がるというもの。しかしそうでもないのが今の金相場。一般的にはというより過去はそうだったというのが正しいかもしれません。
これの理由付けとして、ロシアによるウクライナ侵攻で地政学リスクが高まり、安全資産の金が買われているというもの。もう一つはインフレヘッジのため。インフレでモノの価格が上がるのであれば金価格も上昇します。とにかくリスク分散の観点が強め。

個人的には、中国の動向は非常に気になるところで、米国債の売却+金購入をセットで行っているような現状は、アメリカとの対立を視野に入れた準備を着々としていると見られてもおかしくないと思います。(ロシアのようにドル決済を部分的に制限されても自国で何とかできるように準備しているなど)
仮に、中国に近しい国々が同じような方針を取る動きが広がれば、中央銀行の金買い入れの流れは今よりもさらに進む可能性があると考えています。

さて、各国の話ばかりになりましたが、個人でも金融資産の分散か将来の投資のためかは定かではありませんが、宝飾品などの金の現物買いをする方もちらほらいるような話です。特に中国はお守りみたいな感じで1グラムくらいの金を買われる方もいるとかいないとかで。
過去最高値を更新するような状況の中、個人の間でも注目されているのも興味深いところだなと思いました。

今後、アメリカがインフレから脱却し、金融引き締めから金融緩和(利下げ)に転じれば、ドル安につながりドル建ての金価格は上昇します。ただし需要があるから上昇というわけではなくドル安の影響によるドル建ての価格が変動するだけとも言えます。
このため、インフレヘッジしていた金の売却があれば、金価格の上昇が一服する可能性もあります。
また、ロシアによるウクライナ侵攻も停戦となれば、地政学リスクが和らぐ可能性があります。この場合は、地政学のリスクヘッジで買われていたとすれば売却の流れもあるかもしれません。
さらに、アメリカのインフレ脱却がソフトランディングであり、利下げに転じた局面で経済環境が悪くなかった場合、リスクオンの株買いにつながれば金が売られ、株にお金が流れることも考えられます。
加えてもう一つ金鉱株の株価の推移を見てみると、多くが2022年4月を境に下落に転じている点も気になります。(3割から5割の下落)

個人的には、さらなる上昇余地は限られており、アメリカの利上げの停止までがピーク、利下げ開始からは調整で下げに転じると考えています。もっと言えば今がピークに限りなく近く、利上げ停止も近々あるかもしれない状況のためアメリカ株にお金が入る展開になれば金の下落は避けられないと考えております。

なお、日本の中央銀行は金の保有はさほど多くなく、米国債でヘッジしているようです。米国債の買い入れは一時期中国に抜かれて世界2位となっていましたが、中国が売りさばいている中で再び1位の座に返り咲いています。(これがいいのか悪いのか)

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