造幣局 螺鈿章牌の紹介(1983)

造幣局 螺鈿章牌 その他記念品
螺鈿章牌

 本章牌は、正倉院宝物「螺鈿箱」から図柄を採用されたものであり、昭和58年(1983年)頃に製作された造幣局製の記念品になります。

財団法人や社団法人など行政機関と関わりを持つ団体などで、記念品として扱われていたものがよく見られます。

螺鈿章牌の仕様や図柄、彩色、デザインについて写真と共に記載いたしましたので、お時間あればご拝読お願い申し上げます。

造幣局製 螺鈿章牌について

章牌の図柄と仕様
章牌の図柄と仕様
材質:丹銅
直径:約7.0cm
重さ:約165g
仕上:七宝・金メッキ仕上げ

以下、付属の栞による説明

この章牌は、図柄を正倉院宝物「螺鈿箱」から採用し当局の伝統的工芸技術により制作したものです。
この文様は、中心に八弁八葉花紋をおき、その周囲に八個の花枝文をめぐらしてあるが、図柄は模様の中心部をとり、真珠光に輝く螺鈿←花弁の金色水晶玉の屈折による彩絵の豊麗な色感を七宝により表現してみました。
製作に当っては、地金は丹銅を使用し、図柄を浮彫りにしたうえに七宝を盛り周囲に金メッキを施してあります。

団体等の記念品として

外箱
外箱

団体等の贈呈用記念品として製作された螺鈿章牌は、化粧箱の内側に式典名、表彰名、団体名、年月日などが刺繍されています。
市場に出回っているもので、散見された例としては、

  • 第5回 食品産業優良企業等表彰 農林水産大臣賞 昭和58年11月
  • 1983 Minister of Finance Noboru Takeshita
  • 彰 会長感謝状 社団法人 京橋法人会

が見受けられました。

造幣局製の七宝入り章牌が、功績を称える贈呈品として用いられていたものと思われます。

再現模造としての螺鈿玉帯箱(螺鈿箱)

螺鈿章牌のケース
ケースはベロア調。一般的なもの

正倉院では、技術伝承や不測の事故などの消失に備え、再現模造の製作を続けております。
近年も2019年に「螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)」の模造品完成の報道発表があり、2020年には特別展「よみがえる正倉院宝物―再現模造にみる天平の技―」で作品がお披露目されました。

螺鈿玉帯箱(螺鈿箱)の模造品は、昭和7年に北村久斎により復元された物がありますが、木製黒漆塗による螺鈿、水晶嵌荘(すいしょうがんそう)。箱の内側に貼られている錦は、高田義男により模織されております。
螺鈿箱も特別展「よみがえる正倉院宝物」で展示され、順次全国の博物館・美術館を巡回展示中になりますので、機会に恵まれれば拝見もできますね。

螺鈿箱は、『漆地螺鈿』の技法と呼ばれる正倉院宝物中で数少ない装飾の一つ。
(黒漆を塗った後、漆を模様の形に剥ぎ起こし、螺鈿(貝の真珠部分を用いた装飾)を埋め込む技法)
模造品とは言いますが、技法を忠実に再現して作られる為、再現模造に数年の歳月を費やしたとされる芸術作品でもあります。

なお、再現模造「螺鈿紫檀五絃琵琶」の製作者である北村昭斎は、螺鈿の重要無形文化財保持者(人間国宝)でありますが、北村久斎の孫にあたるお方になります。

螺鈿章牌の図柄

螺鈿章牌の表
螺鈿章牌

正倉院宝物「螺鈿箱」の中央部の図柄を採用したもので、装飾部である螺鈿細工の夜光貝を七宝で見立て、幾何学的とも言える文様を忠実に再現されております。
花芯となる伏彩色の水晶部分は、×のようなデフォルメ感はありますが、色彩と共に螺鈿箱の雰囲気が伝わります。

図柄は、浮彫りされておりますが、七宝の盛りは控えめな印象です。原品も立体感が強く感じられるのは花芯の水晶の部分というのを考えると七宝の盛りも上手く調整されているのだと思われます。

螺鈿章牌の表
八弁八葉花紋

花芯の八弁八葉花紋。

螺鈿章牌の表
花弁

七宝は、経年の割に状態が損なわれていない。

螺鈿章牌の採色

螺鈿章牌の表
七宝の彩色
黒、青緑淡透、橙透、赤透、白の五色。

七宝は、黒、青緑淡透、橙透、赤透、白の五色になります。

螺鈿細工らしい夜光貝の煌びやかさを青緑の透け七宝で表現し、花芯の伏彩色を赤と白ではっきりした色合いとされています。
黒漆塗の背面から図柄の色味が映える印象もあり、唐花文様らしい動きと華やかさが垣間見えました。

螺鈿章牌の背面

螺鈿章牌の裏
金メッキ仕上げ

背面および側面は、金メッキ仕上げ。
また、背面には「造幣局製」の文字が刻まれています。

螺鈿章牌の裏面
造幣局製刻印

フリマサイト、オークション等での実売価格

日付 取引価格
2022/02 15,678円
2021/12 9,250円
2021/09 2,500円
2021/03 7,250円
2021/01 4,125円
2020/10 4,080円
2020/09 3,500円
2019/09 5,000円
2019/03 4,544円
2017/11 6,250円
2017/10 1,000円
2016/11 3,100円
2016/07 2,600円
2015/05 4,700円

直近で確認できたところはこの14件でした。

団体等の記念品としても用いられていたことから、それなりに市場に出回る螺鈿章牌と思います。
また、状態の良いものでも5,000円前後の取引価格となっており、入手しやすい方だと思います。

螺鈿章牌の側面
側面は艶有の金メッキ仕上げ

以上、今回はこの辺りで終わりにしたいと思います。ご拝読ありがとうございました。(管理人)

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