造幣局「久蔵桜」七宝入り銀章牌の紹介

造幣局 久蔵桜 その他記念品
久蔵桜

 久蔵桜、聞き慣れない桜の名前かと思えば、国宝「桜図」の制作者、長谷川久蔵から由来するもの。
本作の作品名を「桜図」と言わず、「久蔵桜」の固有名を付けたところに造幣局(制作者)の金属工芸品に対する情熱を感じます。

七宝入り銀章牌 久蔵桜の仕様や図柄、彩色、デザインについてなど写真と共に記載いたしましたので、お時間あればご拝読お願い申し上げます。

「久蔵桜」七宝入り銀章牌の仕様

章牌の図柄と仕様
久蔵桜
材質:丹銅
直径:65mm×65mm
重さ:約246g
仕上:七宝・金メッキ仕上げ

以下、付属の栞による説明(一部抜粋)

『この図柄は、京都の智積院に現存する障壁画から採用したものです。
作者は桃山時代に活躍した長谷川等伯の長男久蔵(一五六八~一五九三)で二十五歳で制作したのが「桜図」です。
長谷川一門の中で最も才能のあった画家だと言われています。』

希少な造幣局製銀章牌「久蔵桜」

久蔵桜の表
浮彫りの様子

本作に関しては、ほとんど情報が出回っておらず、制作時期や販売価格など詳しいことはわかりません。

しかし、造幣局泉友会発行の図録「造幣局の金属工芸品」に掲載されているのは拝見したことがあります。
この図録の発行は、平成2年あたりだったと思いますので、それ以前に制作された作品であるのは確かでしょう。

販売価格は定かではありませんが、現在発売されている七宝章牌作品の価格が、13~17万円程であることを考えると近い価格であったのではないかと推察します。(当時より地金の銀価格の上昇などもありますが、現行品が160gであるのに対し、本作が250g程度であるのを考えるとそこまで価格差が出ないものと考えております)

また、市場に出回ることがほぼなく、私が知る限りではここ10年で2回しかお目にかかったことはありません。
おそらく、制作された数に限りがあり、受注販売のようなものであったと思われますので、滅多にお目にかかることがないのだと思います。

久蔵桜の図柄

久蔵桜の表
桜の大木

長谷川久蔵の作「桜図」 左隻より桜の大木の図柄を採用しています。

桜図の特徴的な花びらは、一枚一枚をはっきり浮き上がるように描かれておりますが、これは工芸的な技法「盛り上げ胡粉」と呼ばれるものです。かきの貝殻を砕いて作った絵具(胡粉)を何度も塗り重ねて盛り上げる技法になります。経年による剥落が起こりやすく保存が難しいとされますが、国宝である「桜図」の状態の良さから長谷川久蔵の技術力の高さが垣間見えるところです。
本作では、浮彫りと七宝の盛りにより表現されておりますが、立体感が伝わる再現性の高さが伺えると思います。

また、桜の木の重厚感は、下地の模様と赤茶の透け七宝により表現されておりますが、斑模様が濃淡を見せており見事な出来栄えと思いました。

桜の大木に着目した構図と桜の花びらを強調された作品は、優美な「桜図」を金属工芸品に上手く落とし込んだと言えるのではないでしょうか。

久蔵桜の表
左は枝垂桜?

左の枝は下に向かって伸びるように描かれますが、変化をつけることで絵柄に動きが感じられるところも魅力ですね。

久蔵桜の採色

久蔵桜の表
七宝の彩色
白、赤茶透、緑、青透、ライムグリーン の5色。

七宝は、白、赤茶透、緑、青透、ライムグリーン の五色になります。

限られた彩色で色彩の映える表現をなされているのが見事だと思います。
桜の木の赤茶と水面の青の透け七宝が印象的で、はっきりとした色合いの花びらや草が映えるような色使い。
章牌の限られたスペースと限られた配色の中で、色鮮やかさを感じられる作品だと思います。

久蔵桜の背面

久蔵桜の裏
金メッキ仕上げ

背面および側面は、金メッキ仕上げ。
また、背面には「純銀」と「造幣局製」の文字が刻まれています。

久蔵桜の裏面
背面下部には、純銀と造幣局製の刻印。

フリマサイト、オークション等での実売価格

日付 取引価格
2022/05 41,800円
2016/03 25,700円

直近で確認できたところはこの2件でした。

かなり数が限られる作品だと思いますので、出回ること自体が稀だと思います。
銀の地金の変動(高騰)も相まって価格は流動的な面がありますが、定価もかなり高額だったことを考えると上記のような価格であれば値頃感があると思ってしまいます。

久蔵桜のケース
ケースはベロア調。一般的なもの

以上、今回はこの辺りで終わりにしたいと思います。ご拝読ありがとうございました。(管理人)

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